景気が悪くなると流行りだすものがある。
といっても、100円ショップやケチケチ生活術、上手な買い物術などではない。
ズバリ、「儲け話」。
それも「楽して儲ける」話だ。
そんなうまい話が、と思うだろうが、景気が悪くなると決まってこの手の話が増える。
ちょっと前までは「未公開株」だったが、さすがに株価低迷の昨今は「未公開株」に関係した勧誘電話は少なくなった。
代わりにかかってくるのが投資話だ。
実はつい数日前も、この手の電話がかかってきた。
岡山駅前にある「アイ・・」という会社だと名乗り、「投資信託に興味はおありですか」「いままでに投資や株をされたことはありますか」と女性が電話口で尋ねてくる。
まず、こちらが株や投資に関心があるかどうかを探り、本題につなげていくのはセオリー通りだ。
この種の電話には相手をしないのが一番だが、私の場合はいつも一応、内容と社名、所在地、電話番号までを確認してから切ることにしている。
いよいよ、本題に入った。
「アルトン株式会社って、あまり聞かれたことがないと思うのですが・・・」と言いながら、和牛の輸出をしている会社で、1口10万円で最低50万円からだが投資をすれば、5年で12%の利子が付くと勧める。
「アイ・・」という会社は大阪本社で、岡山駅前にも支社があるそうだ。社名の「アイ」の部分は「AI」と書くのだという。
この低金利時代に5年後に12%の利子というのは魅力的だ。言葉を換えれば、「上手すぎる」話である。
昔から「うまい話には裏がある」という。
だが、低金利に不景気が重なると、「12%」という言葉に思わず引かれる人もいるだろう。
注意したいのは「12%」という数字である。5%でも8%でもなく、「12%」なのだ。
2桁数字に思わず引かれる(欺される)のだ。
ゼロ金利時代にあり得ない数字である。3%や5%という数字の方が少しは現実に近そうに思えるが、「嘘は大きい方がいい」(ヒトラー)といわれるように、あり得ない話を逆に信じてしまうのだろう。
「大きすぎる話」、例えばNASAで使われているとか、和牛をアラブ圏に輸出するとか、一時期流行ったM資金といった話は即座に確かめられないので、聞いた人はその話をそのまま信じるか、信じないかのどちらかしかない。話が大きすぎると人間は思考停止に陥るようだ。
さらにヒトラーは言っている。「大きな嘘に、小さな真実を入れろ」と。
どこそこの駅前に支社があるなどという簡単に確認できる「小さな真実」を入れることで、大き過ぎて確かめられない嘘を信じさせるのだ。
不況になると人は目先の自分の利益しか考えなくなり、不確かな話、儲け話に乗りやすくなる。
だから、そこに付け入るビジネスが生まれる。
世の中にそうそう「うまい話」はないと肝に銘じるべきだろう。
うますぎる話にはくれぐれもご用心。
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